01 |思想編|なぜ投資するのか?

資産形成・投資|思想編 第4話|インデックス投資を選んだ理由──感情に流されず、設計で勝つ方法

妻
でもやっぱり、インデックス投資って地味だし、面白くはないよね。
やってて楽しいわけでもないし…
私
それは正しいかも。でもね、「面白くない」っていうのは、逆に言えば“感情を排除できる”ってことなんだ。
そこが一番、強いところなんだよ。

かつて私は、個別株で失敗しました。でも放置していた確定拠出年金は、堅実に資産を増やしていたのです。

──感情で動くより、設計で続ける方が、結果は良い。


インデックス投資とは、人類の成長に賭けること

インデックス投資とは、簡単に言えば「市場全体をまるごと買う」投資です。しかも、その”存在比率”どおりに、淡々と買い続ける──その比率も自動で調整してくれる仕組みになっています。

別の言い方をすれば、株式市場に存在するすべての銘柄を時価総額に応じて保有するもので、市場を縮小コピーしたものです。

そして何より、この投資法は、人類全体の成長に賭けるという発想でもあります。
個別の企業がつまずくことはあっても、世界全体の経済は長期的に成長してきました。新しい技術、サービス、国の台頭──
そうした力をまるごと受け取るのが、インデックス投資なのです。

かつて私は、トヨタやエーザイなどの個別株に投資していましたが、リーマンショックで株価が急落した際、上昇を信じきれずに売却。結果、当然のように損失が出ました。

証券口座の数字を見て青ざめたあの瞬間は、今でも鮮明に覚えています。値下がりの最中に、その先の回復など想像すらできなかったのです。

一方で、それより前から始めていた会社の確定拠出年金(DC)は、完全に放置していたにもかかわらず、堅実に資産を増やしていました。放置できたのは、当時の残高が小さかったという偶然もありますが──

あれ? 何もしてない方が結果が良い?

そんな違和感をきっかけに、私は投資を一から学び直すことにしました。200冊以上の書籍を読み漁る中で、初期に出会ったのが橘玲さんの『臆病者のための株入門』。読みふけったその1冊が、私の投資観を大きく変えました。

そこにあったのは、世界中に分散されたインデックス投資という戦略。しかもそれは、ノーベル経済学賞を受賞したファイナンス理論(ハリー・マーコウィッツやウィリアム・シャープ)に基づいた合理的なアプローチでした。

そしてこれは、経済学的にもっとも正しい投資法として紹介されていました。

さらには、この投資法なら、サンダルをつっかけて近所の証券会社に出かけ、「すみません。インデックスファンド10万円分ください」というくらいに簡単であるとも紹介されていたのです。

いまなら証券会社に行く必要すらなく、スマホでポチッと買えてしまうわけです。

数学で証明されてる?それなら、迷う理由なんてないじゃん。
経済学的にもっとも正しいんでしょ?
しかもお手軽!

そう思いました。どの企業が将来伸びるかなんて、自分には分かりません。なんとなく投資するのではなく、理論と仕組みに基づいて投資する。そして誰にでも買える。

そうだこれだ。

これが、自分に最も合った方法だと確信したのです。

“プロのいない世界”で、設計で勝つ

株式市場は、プロと素人が同じ情報・同じルールで戦える、きわめてフェアな世界です。だから私は、投資先として「株式」を選んでいます。

でも──果たして本当に、プロが跋扈するフィールドで素人が勝てるのだろうか?

こんな疑問にも、橘玲氏は『臆病者のための株入門』で答えてくれます。

「そもそも投資の世界に“プロ”なんていない」

プロが居る世界と居ない世界。この違いは素人がプロに勝てることがあるかどうかで判断できるといいます。

「プロ」とは、どれほど努力しても到達できない高みに達した人たちへの呼称。偶然がどう重なろうと、実力の差は覆せません。プロの居る世界、たとえば、大谷翔平や藤井聡太に素人が勝てるかどうか。考えるまでもなく勝てるわけがありません。

では投資の世界ではどうか、この世界では、素人がプロに勝つことがある。SNSやYouTubeでは、真偽のほどはさておき、「一般人が数億円稼いだ」といった話も珍しくない。

株式投資は偶然が支配する世界、つまりプロが居ない世界。

橘玲氏はさらに、こう喝破します。

「株式市場は、コイン投げと同じ“偶然のゲーム”である」

偶然で勝敗が決まる、つまり、勝者すら、運に支配される世界
こんな世界だというならば、私たちが取るべきは、「勝とうとすること」ではなく──

“勝ちやすく、生き残る”ための戦略。

感情に流されず、設計で続ける。
それが、インデックス投資。ノーベル賞理論に裏打ちされた、確率的に優位な仕組み
私はこの思想に、深く納得しています。

株式市場に“勝つ”必要なんてない。生き残る設計を持てばいい。
だから私は、インデックス投資を選びました。

橘玲氏『臆病者のための株入門』学びの要点
  • 「そもそも投資の世界に“プロ”なんていない」
  • 株式投資は偶然が支配する世界、つまりプロが居ない世界。
  • 「株式市場は、コイン投げと同じ“偶然のゲーム”である」

感情を排し、“続ける仕組み”をつくる

「下がって怖いから売る」
「上がってきたから波に乗り遅れまいと買う」

──このように、感情のままに動けば、常に市場に振り回されてしまうのです。

インデックス投資は、毎月自動で積み立てる仕組みを作ることができます。これにより、感情の介入を最小限に抑え、「続けられる設計」が実現します。これこそが、インデックス投資最大の強みです。

“フェアな市場”でも、個別株は運命に左右される

株式市場は、法と制度に守られたフェアな仕組みです。情報開示も整備され、四半期ごとに決算が公表される──だから、初心者にも開かれた投資のフィールドと言えるでしょう。

しかし、それでも個別企業の未来までは保証されません。企業がいかに誠実に情報を開示して、将来のことを明るく語っていたとしても、時代に取り残されれば淘汰される。10年後、20年後の主役が誰かなんて、誰にも分からないのです。

インデックス投資は「市場全体」に投資します。ある企業が淘汰されても、代わって伸びる企業が自然とポートフォリオに組み込まれる。たとえば、iPhoneのような革新が起きれば、関連企業が“自動的に”組み込まれる仕組み。

100円からでも買える──でも、”自由”には設計がいる

重要なのは、「どう生きたいか」を出発点に設計すること。たとえば、自由な暮らしを実現するには、月にいくら必要なのか。そこから逆算して、何年かけてどれだけの資産を築くのか。

ビッグピクチャーを描き、生活感覚で目標を見積もり、積立金額へと落とし込む──これは、まさに仕事を通じて学んだプロジェクトマネジメントそのものです。

私たちの実践──設計で“続けられる”投資を

私が確定拠出年金(DC)を始めて、今年で約20年。資産残高は約4倍に増え、トランプ関税など市場の荒波も“含み益のバリア”が守ってくれています。資産だけでなく、心の平穏も。

もちろんDCだけではありません。今では私も妻も、利用可能な制度をすべて活用しています。

  • 確定拠出年金(DC)
  • 確定拠出年金(iDeCo)
  • 旧NISA
  • 新NISA
  • 特定口座

私はDCでオルカンが選べないため、先進国・新興国・日本を全世界の構成比で再現し、いわば「自作オルカン」を運用しています。

一方の妻は、iDeCoとNISAでオルカン一択。スマホでポチッと積み立てるだけ。それが、彼女にとっての“続けやすい設計”です。

(※「オルカン」って何?詳しくは記事の最後で補足しています ▶)

結び──自由とは、「積み上げた現実」である

自由の象徴イメージ

投資は、派手に勝負する世界ではありません。続けられる仕組みを持った人だけが、確実に前に進める世界です。

shisan-tabiが描く「自由」とは、遠い夢ではなく、日々の設計と積み上げによって現実化していくもの

インデックス投資は、そのための極めて強力な道具です。誰にでも選べて、誰にでも設計できる。

自由に生きるための、もっとも現実的な手段。それが、インデックス投資なのです。

【補足】オルカンって何?

オルカンのイメージ

「オルカン」とは、正式には「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という投資信託の通称で、インデックス投資家にとっての“定番商品”です。

全世界の株式に分散投資できる設計で、運用コスト(信託報酬)がきわめて低く、初心者から上級者まで多くの支持を集めています。詳細は、三菱UFJアセットマネジメントの公式ページも参照ください。

経済評論家の山崎元さんも著書の中で、次のように述べています。

今なら、通称「オルカン」こと「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」でいい。理由は、有利な形で分散投資されていて、運用の手数料が安いからだ。

──出典:山崎元『経済評論家の父から息子への手紙: お金と人生と幸せについて』

補章──構造を理解すれば、投資は“参加”に変わる

私たちはよく、「投資って怖い」「損したらどうしよう」と言います。

でも──それはたぶん、「仕組みを知らないまま、“怖さ”だけが強調されてきたから」ではないでしょうか。

「会社に勤めていれば安泰」「国がなんとかしてくれる」といった安心感は、いま揺らいでいます。

この現実に向き合ったとき、投資は“怖い選択肢”ではなく、資本主義における自分の参加と未来設計という“態度”へと変わります。

制度や確率、行動経済学の知見も活用し、感情ではなく、設計で未来を築く。

これこそが、shisan-tabiが伝えたい「自由を設計する」という思想の出発点なのです。

次回予告

次回は──
「リスクと報酬」──資本主義という“現実のルール”と、私たちの選択について掘り下げます。

リターンを得るにはリスクを取るしかない。
投資だけでなく、人生そのものに通じるテーマとして考えていきます。


参考文献:
橘玲『臆病者のための株入門』(文春新書, 2006年)
本記事は、同書に多くを学び、その構造的な思考をもとに執筆されています。

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この記事を書いた人
shisantabi管理人(夫)
shisan-tabi管理人(夫)
旅のプランニングと資産設計を通じて、自由な人生を構造的にデザインすることを追求中。
50歳での早期退職を目指し、世界一周航空券での長期旅を本気で準備しています。
思想・構造・実践──人生を支える「資産としての旅」を記録・発信中。